あなたは「いい子症候群」という言葉を聞いたことがありますか?これは、教育評論家の“尾木ママ”こと、尾木直樹さんの発言から広まった言葉。
わがままを言うこともほとんどなく、ママを困らせることも少なく育てやすい。そんな手のかからない、いい子なんて羨ましいですよね。でも、それが親や先生など、大人の顔色を伺って、好かれたいがためだけに「いい子」を演じ、あえてそうしているだけの状態だったとしたらどうでしょう。
そのままでは、行動の指針が「親が喜ぶから」「先生が褒めるから」だけになってしまい、自分自身が本当にやりたいこと、楽しいと思うこと、などを見失ってしまうようになってしまい、人生の喜びを見失ってしまうかもしれません。
そして、そのまま大人になった時、それは「指示待ち人間」や「新型うつ」に繋がってしまいかねないのだとか。これは「ウチの子は“いい子”で助かる」と放置しているのは問題があるかもしれませんね!?
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目次
「いい子症候群」の特徴と対応策
常に「親に認めてもらいたい」という気持ちを抱えながら生きているのが「いい子症候群」の子供たち。その特徴は大きく分けて3つあります。
・「喜怒哀楽など感情を表に出すのが苦手」
・「親の言うことに従う」
・「反抗期がない/なかった」
これらは親からの評価が自分の評価に直結し、それ以外評価基準がない「いい子症候群」になってしまっている子供の特徴です。
親から否定的な言葉を浴びせられると、自分でも自らを否定してしまい、反対に親に褒められると、自分の存在自体を肯定してくれたように感じられます。つまり「親からの評価=自分の存在価値」そんな価値観の子供は、全信頼を置く親へ媚びるように、常に親の顔色をうかがい、好かれるために「いい子」であることをストイックに演じ続けてしまうのです。
「いい子症候群」の子供の特徴
「いい子症候群」にはいくつか共通した特徴があります。まず、「いい子症候群」である子供本人の特徴を確認しておきましょう。
・常に自信が無さげで、大人からの具体的な指示がないと不安
・自分の意見を言うのが苦手で嫌がる
・普段通りではないイレギュラーなことが起こるとパニックになりやすい
・幼い頃から手がかかった印象がない
・比較的大人しく、あまり目立たないほうだ
・失敗をするとひどく落ち込んでしまう
・困ったときに他人に助けを求めるのが苦手
・感情表現が乏しく喜怒哀楽がわかりにくい
・人と話す時、相手の目をまっすぐに見て話せない
・イライラしていることが多い
・長子、もしくは一人っ子
・幼稚園や小学校では優等生だった
・自分の長所を思い浮かべることができない
・反抗期という反抗期がなかった
上記に一つでも当てはまれば「いい子症候群」というわけではありませんが、当てはまる数が多いと「いい子症候群」である可能性は高いと言えるでしょう。常に親に喜んでもらおうとしていたり、褒められようとしていたりして、自分の希望より「我慢」することを選んでいるようであれば、要注意です。
いい子症候群」にさせてしまいがちな親の特徴
続いて、我が子を「いい子症候群」にしてしまう親にもいくつか共通した特徴があります。その特徴も確認しておきましょう。
・子供をあまり褒めることがない
・子供よりも自分の私利私欲を優先してしまう
・ルールは必ず守るべきだと思う
・自分の子と周りの子供を比べてしまいがち
・子供は親の言うことに従うべきだと思う
・子どもをまったく叱らないし叱るのが苦手
・子育てで思い通りにならないとイライラして、感情的になってしまう
・我が子は周囲の子に比べて劣っていないか気になる
・子供の関心があることに興味を持てない
・自分の人生を犠牲にして子育てをしているという意識がある
・子供に手をあげてしまったことがある
「子供は自分の思い通りにならないのは当たり前」という考えが身についている親は、無理に親のエゴを押し付けようとしていないため、あまり当てはまらないかもしれません。ただ当てはまるものが多かった方は、自身の理想を子供に押し付けてはいませんか?普段から子供本人の持つ能力以上の期待をかけるようなことを言ったり、他の子と比べたりするような発言をしていませんか?人それぞれ個性があるように子供自身の個性を見つめてあげてください。
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「いい子症候群」が大人に成長した時 新型うつとの関連性
近年、現代病として名前が挙がるようになった「新型うつ」。2012年に行われたNHKの調査によると上場企業2,200社の65%もの企業が「新型うつの社員がいる」と答えています。
そもそも「新型うつ」とは?
従来のうつの特徴
・中高年に多い
・自分を責める
・責任感が強く、真面目なタイプに多い
・食欲がなく、眠れないことが多い
・症状は一日中絶え間なく続く
新型うつの特徴
・20~30代に多い
・他人を責める
・傷つきやすく、自尊心が強いタイプに多い
・食欲が旺盛になり、睡眠時間が増える
・仕事中に症状が出るが、それ以外では元気
子どもの頃からいい子で過ごしてきており、失敗しない処世術を身に付け成長してきている「いい子症候群」の子供は、失敗の経験もなく育ってきた。なので失敗に対する耐性が備わっていないため、新型うつを発症しやすい傾向にあります。
さらに、「いい子症候群」の中には、高学歴であるにもかかわらず、就職活動で失敗するパターンも多くあります。今まで、「親」の理想である「いい子」を無意識に演じてきていることが原因。いざ面接で自己アピールをしなければならなくなっても、アピールする対象者が変わってしまうことから、アピールする「自己」がどこにもなく、得意なことややりたいこと、長所などを具体的に伝えることができなくなってしまっているのです。
また、失敗せずに育ってきているがゆえの障害は就職後にもあります。失敗していない挫折ゼロの成長過程を過ごしていることで、根拠のない自信やプライドが身についてしまい、こだわりが強過ぎて、柔軟な考えや応答が必要になってくる現代社会で職場に馴染めない。人間関係がうまくいかず就職しても転職を繰り返してしまうなど。このようなタイプは、子供の頃からそれが当たり前に育ってきているため、本人は無自覚であるという場合が多くみられます。
「いい子症候群」の原因と対策
「いい子症候群」の原因の1つとして言えるのが、子供への「高すぎる期待」。子供は親の態度から気持ちや要望を敏感に感じ取り、「こうすると親は喜ぶ」などと懸命に喜ばせようとしてしまいます。そして、親を喜ばせようと、子供は行動してしまい、お互い本人の意思とは異なり、知らず知らずの内に本当の気持ちや意思ではなく、親が「いい子」を演じるよう誘導してしまっているのです。
親自ら感情豊かに子供に接する
「子供が真似するから」「お手本にならないと」などと、ついつい完璧な親の姿を目指し子供の前で接していませんか?誰しも完璧な親になどなれるわけではありません。どんな著名人の親も有名アスリートの親も、失敗やダメなところも見せながら試行錯誤子育てをし、自分の姿を見せて育ててきているはず。
ゴキブリを怖がって叫んでみたり、感動ドラマで泣いてみたり、冗談を言い合って大笑いしてみたり、怒って泣いて笑って、喜怒哀楽のお手本を見せてあげると、「感情を外に出してもいいんだ」と子供も感じ、徐々に感情表現ができるようになるはずです。
子供と同じ目線で色々なことに向き合う
親だからといって常に上から目線である必要はなく、子供と同じ目線で様々なことに向き合っていくことも時には大切。親であり人生の先輩だからこそ、子供のためを思ってアレやコレやと、つい口出ししたくなってしまいますが、口出しする前に子供本人の意見も聞いてみましょう。普段から子供が自分の意見や提案が言いやすいような環境作りを家庭で心掛け、まずは子供の主張や希望にしっかりと耳を傾けてあげましょう。
そして子供の考えと気持ち・傾向を知り、子供が興味のあることや得意なことに対して共感し、上手にできたら褒めてあげることも重要だといえます。
「いい子ね~」という褒め言葉はやめる
子供を褒める時に「ママの言うこと聞いていい子ね~」「ワガママ言わないでいい子ね~」と限定的に同じようなシチュエーションだけで褒めてはいけません。ママの指示通り、そうすることだけが最善策なのだと思い込んでしまいかねないからです。ママ自身にとって都合がいい時だけ褒めるのではなく、その他のシチュエーションでも「上手に絵が描けたね~」「虫さんいっぱい採れたね~」など親自身に利益がないことでもどんどん褒めてあげましょう。
期待しすぎず、のびのびと育てること。
「いい子症候群」のまま成長すると、自分のやりたい事がわからないということにもつながります。子供に対し「期待しない」ということではなく、親の考えを無理強いしたり、本人の能力以上のプレッシャーを与え続けてはいけません。親が自分の欲求を満たそうとするのではなく、まずは子供をのびのびと育てること。
ママ自身の叶えられなかった夢を子どもに押し付けるパターンは、期待が強過ぎて親が子供に依存している状態になっているということも。そのような親は、まず自分の空虚感に気付くことが大切。なぜ子どもに要求し過ぎてしまうのか、そんな自分自身の心と向き合い、気持ちを察知し整理してみてください。
「いい子」な我が子にも疑問を持って
親思いな手のかからない「いい子」な我が子。もしかしたら大人の顔色をうかがっているだけなのかもしれません。親自身の都合で子供の行動を考えずに、喜怒哀楽の対象は?子供の興味は?どこに向かっているのか、身も心ものびのびと成長できているのか、日々観察していましょう。
我が子を「いい子症候群」にしてしまうのは、大人の未熟さや過剰な期待。子供の自主性を確保するには、まず、大人である親が自分自身と向き合う必要があるのです。
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