ベトナムのコーヒー豆はブラジルに次いで世界第二位というほどの生産量を誇っています。1980年代初頭では世界42位だったベトナムが第2位にまで生産量を伸ばしてきたのはなぜか。そして、ベトナムのコーヒーと言えば、コンデンスミルクを使った甘くて濃厚な「ベトナム式コーヒー」が知られています。
何故ベトナムではこのような飲み方が主流になったのでしょうか。ベトナムにおけるコーヒーの歴史を追いながらその本質に迫ります。
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<h3最初のコーヒー豆はフランス人によってもたらされた</h3>
ベトナムは1885年にフランスと清が天津条約を結ぶまでの長い間中国の統治下にあり、その後はフランスによる統治が1946年まで続きました。統治下に入る前の1862年、ベトナムとフランスは講和条約を結び、ダナンとクァンイェンの港を開講することになりました。フランスからは多くの食材も持ち込まれ、そんな中1人のフランス人宣教師がコーヒー豆を持ち込んだのが最初だとされています。
<h3>ベトナムコーヒーの生産量が急激に伸びた背景</h3>
1986年にベトナムはこれまでの閉鎖的な社会主義経済から解放的な市場経済へ変えていくための政策をうちだしました。1995年に生産量世界一を誇るブラジルでコーヒー豆の不作により国際価格が高騰すると、ベトナムでコーヒーブームが起こり、多くの農民がコーヒー栽培に参入。その結果、ベトナムのコーヒー生産量は急増し、2000年にはコロンビアを抜いて世界第2位のコーヒー輸出国となったのです。
<h3>ベトナムの風土に順応したコーヒー豆</h3>
当時のフランスでは「アラビカ種」という豆が主流でした。アラビカ種は高温多湿に弱く、霜や霧、乾燥などの気候の変化や病害虫の影響も受けやすいことからブラジルでは標高1,000m以上の高地で栽培が行われています。とてもデリケートな品種ですが、それだけに他のものにはない豊かな風味や酸味を持っています。
一方で「ロブスタ種」は500m~600mの標高でも栽培が可能であり、病害虫にも強くアラビカ種よりもずっと安価で手に入ります。ただし、ストレートで飲むと特有の苦みや渋みが出てしまうため、通常はブレンドのための豆として使われています。ベトナムの風土に適していたものは「アラビカ種」ではなくこの「ロブスタ種」でした。
<h2>ロブスタ種の生産の増大、ベトナム式コーヒーの誕生</h2>
このように世界第2位の輸出量を誇るベトナムですが、その輸出量の多さは一般的にはあまり知られていません。それはなぜでしょうか。
<h3>ベトナムで主流となったロブスタ種</h3>
ロブスタ種は通常500m~600mの標高で栽培されますが、ベトナムの中部高原はちょうどこれと同様の標高を持っています。この土地の条件の良さと、ロブスタ種が病気にも強いなどの育てやすさもあり、ベトナムは環境と生産の安定性という大きな強みを手に入れることができました。
しかし、ロブスタ種は先述したように特有の苦みや渋みがあり、ブレンドコーヒーのために使われているほか、インスタントコーヒーやアイスコーヒーなど濃い抽出がふさわしいものに多用され、単独で飲まれることはあまりありません。生産もクオリティの高さよりは量の多さが求められます。そのため、質の高さを競う「アラビカ種」などと違ってあまりその存在に注目が集まらなかったのです。
<h3>ベトナム式コーヒーの誕生</h3>
そのような単独で飲むにはあまり美味しくないとされるロブスタ豆を使ったコーヒーを美味しく飲むために工夫されたのが「ベトナム式コーヒー」と呼ばれるものでした。
ベトナム式コーヒーには専用の金属製のコーヒーフィルターと耐熱性のガラスのグラスが使われます。豆はその渋みや苦みにコクを出すためにそれぞれのお店ごとのオリジナルでバターやチョコレートなどのフレーバーを付けて焙煎し、粗挽きにします。耐熱性のガラスのグラスにはたっぷりのコンデンスミルクを注いでおき、フィルターと挽いた豆をセットしてお湯を注ぎます。全てのコーヒー液が抽出されたらフィルターを外し、下のコンデンスミルクとよく混ぜて飲みます。アイスで飲む場合は氷の入ったグラスにこの出来上がったコーヒーを注いで冷やします。
かなりの量のコンデンスミルクが入っているので甘さはかなり強烈で、本場ベトナムではベトナムコーヒーを注文すると、口直しのための蓮茶などが無料でサービスされます。もともとはフランスの文化のカフェオレに影響されたもののようですが、熱いベトナムでは牛乳の保存が難しく、保存の簡単なコンデンスミルクを使うようになったと言われています。
<h2>ベトナム式コーヒーを楽しめるお店</h2>
通常、ベトナム料理店ではベトナム式コーヒーはメニューにあると思いますので、それをお目当てにベトナム料理店を訪れてみるのもいいですね。ここでいくつか都内でベトナムコーヒーの飲めるスポットを紹介いたします。
ヴェトナム・アリス ルミネ新宿店
03-5339-2033
東京都新宿区西新宿1-1-5 ルミネ新宿LUMINE1 7F
http://tabelog.com/tokyo/A1304/A130401/13004232/
新宿駅と繋がるルミネの7階にあるベトナム料理。セット内容も充実していて、初めてベトム料理を食べる方でも悩まずいろいろな料理を堪能できます。食後の〆に是非ベトナムコーヒーを。
ペパカフェ・フォレスト
0422-42-7081
東京都三鷹市井の頭4-1-5 井の頭恩寵公園
http://tabelog.com/tokyo/A1320/A132001/13005873/
吉祥寺の井の頭公園内にあるベトナム料理店。テラス席などもあり、開放的な雰囲気。緑に囲まれているため、蒸し暑いことも多いですが、その暑さもベトナム料理の味わいに一役買ってくれるかもしれません。公園の散歩の途中で一休みして、甘いベトナムコーヒーでほっと一息つくのはいかがですか?
CAFE HAI
03-5620-5962
東京都江東区三好4-1-1 東京都現代美術館内
http://tabelog.com/tokyo/A1313/A131303/13087986/
東京都現代美術館の2階のフリーフロアに設置されているカフェ。お料理の最後に、というのではなく気軽にベトナムコーヒーを楽しみたい方はこういうお店でまずチャレンジしてみては。
世界第2位の生産量を誇りながら、これまでその単品のクオリティに注目が集まらなかったためにその生産量の多さが広く知られることのなかったベトナムコーヒー。コーヒーの価格が世界的に暴落した時にもじっと耐え、その回復を信じて生産をコツコツと続けてきた我慢強いベトナムのコーヒー農家の人々。そんなベトナムのコーヒーの歴史と人々の歩みに思いを馳せながら、あのとびきりの甘いコーヒーを一度体験してみるのはいかがでしょうか。
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