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気になる保育士の年収って!?保育の現状から分析


今、日本では、保育園に入れない待機児童が大勢いることが、問題になっています。保育園が足りないということもありますが、保育園で働く保育士も不足しています。その原因の一つは、待遇の悪さにあると言われています。他の業種に比べて平均年収が少ないということがあるようです。

ここ何年も待機児童のことは問題視されているのに、どうして保育士への待遇が改善されていかないのでしょうか?小さいお子さんを持っている親御さんはきっとこの問題には大きな関心があると思います。わが子を預けて働きたい。でも、保育園は足りない。早くなんとかして欲しい。

しかし、この問題の背景には、保育園や保育士の抱える様々な事情があるのです。ここでは、保育士の平均年収とその背景に迫ってみたいと思います。

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保育士の平均年収


保育士というと、女性が多い職種です。近年は、男性の保育士も見かけるようになりました。年々少しずつではありますが増えてきてはいるようです。一般の企業では、総合職は男女平等ということになっておますが、女性の多くが一般職で採用され、収入は総合職に比べ低く、昇給額も低い。つまり、やはり全体的に見れば女性の方が収入が低いという現状です。

それでは、保育士はどうなのでしょうか。男女に違いはあるのでしょうか。調べてみました。

平均年収

保育士の平均年収は、323万円ほどです。先ほども示しましたが、ここ数年、300万円強の水準で推移しています。
また、都道府県によっても随分違ってきます。200万円~380万円とかなりの差が出ています。

もちろん、物価の違いや地価の違いもあるとは思うのですが、自治体によって保育政策への取り組み方に差があるということでしょう。

男性平均年収

男性の保育士が少しずつ増えて来てるといっても、まだ、全体の3%ほどです。では、その男性保育士の年収はどれくらいなのでしょうか。

平成27年賃金構造基本統計調査によると、男性保育士の平均年収は3,46万円ほどでした。平均年齢は、30歳でしたので、若い時期での離職率が高いと言えるでしょう。

女性平均年収

では、女性の平均年収はというと、3,22万円ほどでした。男性の保育士より低いですね。

平均月収

年収はボーナスも含みますが、平均月収はいくらなのでしょう。
平成27年度調べ:22万円

平均時給

平成27年調べ:平均時給は、1,251円

平均年齢

平成27年調べ:35歳

平均勤続年数

平成27年調べ:男女合わせて6年ほど
早く辞めてしまう人がいかに多いかがわかります。

保育園にも公立と私立があります。公立の保育園で働く保育士は、公務員となります。公務員は、復帰しやすいという条件もあり、勤続年数も長くなるようです。長く働き続ければ、公務員と同等に収入も上がってきますので、平均収入も高くなるのです。

他業種との比較

保育士の収入が低いことを示してきましたが、それでは他の業種はどれくらいなのでしょうか。他の業種についても調べてみました。

職業別の年収ランキングとしては下記のようになります。

1位→パイロット:1,530万円

2位→医師:1,098万円

3位→弁護士:1,094万円

4位→大学教授:1,086万円

5位→大学准教授:857万円

6位→記者:823万円

7位→大学講師:739万円

8位→公認会計士:717万円

9位→税理士:717万円

10位→不動産鑑定士:711万円

上位10位までを紹介しました。
全職業の平均でも422万円ですから、保育士は国家資格を有する仕事であるのに少ない方だということがわかります。

それでは、なぜこのように平均年収が低くなってしまうのでしょうか。保育の現状について見ていきたいと思います。

保育の現状

冒頭でもあった通り、現在日本では待機児童が問題になるほど保育園が不足している状態です。特に都市部での保育園不足は深刻です。ニーズに受け皿が追いついていかないのはどうしてなのでしょうか。

保育園の設置の難しさ

誰でもが自治体が運営する公営や認可保育園に入れたいと思うはずです。保育園には、自治体が運営する公営の保育園、自治体が定めた基準を満たし自治体から認められた認可保育園、そして認可外保育園があります。しかし、待機児童問題を受け、自治体も認可保育所を増やそうと努力はしているのですが、なかなか思うように増やせていないのが現状です。

覚えていますか?少し前に保育園建設に近隣住民の反対があり建設が出来ない、ということがありました。保育園が出ると子供たちの声が騒音になるというのです。こんな近隣住民の反対も、保育園建設を困難にしている要因になっているのです。また、地価が高いのも用地確保の妨げになっています。以下に細かい基準に関して記述しました。

認可を受けるための基準の難しさ

補助金を受けるためには、自治体からの認可を受ける必要があります。以前は、国によって基準が設けられていましたが、現在は少し緩和され、都道府県ごとに基準を設けられるようになりました。

ですので、都道府県によって基準は違ってくることもあるのです。細かい数字等の点に違いはあるとは思いますが、基準項目はほぼ同じだと思います。ここでは、東京都を一例として挙げてみましょう。

1、設置場所:原則、2km以内に保育所がないこと(例外地域もある)

2、設置経営団体:民間保育所の設置経営は、社会福祉法人、NPO、学校法人、宗教法人、株式会社 など

3、定員数:保育所の定員は20人以上(一定以上の条件を満たしている場合は、例外もあり)

4、児童年齢:3歳児未満2割以上、2歳児未満1割以上

5、建物、設備:乳児室又はほふく室→0歳児及び1歳児1人当たり33㎡以上、

・保育室又は遊戯室→2歳児以上1人当たり1,98㎡以上、

・医務室→静養できる機能がある(ベットなどがある)こと、事務室と兼用も可能、

・屋外遊戯室→2歳児児童1人当たり3,3㎡以上、保育所付近にある屋外遊戯場に代わるべき場所(公園、広場)を含む

・調理室とトイレ→定員に見合う面積、設備があること

*その他、耐火・準耐火建築物であること。階段、ベランダ、非常階段等の厳格な基準が必要。壁、天井は不燃物素材で仕上げること。非常警報設備等の設置。カーテンなどの可燃性の物への防火処理をする。など細かい基準あり

6、保育士:0歳児3人に1人以上、1歳児及び2歳児6人に1人以上、3歳児20人につき1人以上、4歳児以上30人に1以上とする

7、調理師:定員40人以下の施設には1人以上、41人以上150人以下の施設には2人以上、151人以上の施設には3人以上おくこと

8、嘱託医をおくこと

9、施設長:保育士資格を持ち、実務経験がある者 など。

10保育所の開所時間:一日11時間を基本とし、保育時間は一日8時間を原則とする

この他にも細かい内容はあるようです。

認可保育園を建設したい時は、事業主は担当役所と何度も話し合いを持つそうです。認可を受けるためには、相当な費用と時間がかかるというわけです。この基準を満たすのが大変ということも、保育園が増えない一因になっているのです。

保育士不足

保育園が新設出来ない、という理由の一つにもありましたが、保育士不足も大問題となっています。そもそも他の条件が整っていても、働く保育士がいなければ、保育園の認可は受けられません。

資格は一生もの、就職には絶対的に有利、ということで保育士の資格を取得している若者も多いのですが、実際に保育の現場に就職する卒業生は少ないという現状があります。また、卒業後保育園に就職しても結婚後に戻ってくる人は少ないというのです。

保育士の仕事は、子供たちの生活の面倒から幼児教育まで。保育時間外にはその他の事務作業や翌日の準備・・・等、大変な労働です。なのに賃金も少なく、人手不足により一人一人の労働条件が厳しくなっております。加えて、女性の多い職場環境にも問題があるようです。

保育士の低賃金

保育士の賃金が低い、と言われますが、では、いったいどのくらいの賃金なのでしょうか。
平成28年度賃金構造基本統計調査によると、保育士の平均給与は、月額23万円ほどです。(平均年齢36歳)過去の平均を見ても、年収300万円強という水準で数年続いています。つまりあまり上がっていないということです。

平成28年度の全平均年収が422万円(平均年齢43歳)と、保育士の平均年収は全国平均に比べ少ないのですが、初任給は他の企業とほぼ同じ額なのです。なのに、その後あまり昇給していかないのです。また、平均年齢が全体より若い、ということから、若い時の離職率が高い、というのも分かります。

国家資格を持っていながら、給料が上がらない。普通であれば、資格があれば、それが賃金にも反映されるはずです。そのうえ、保育士は、かなりの重労働です。このような点からみても、やはり、保育士の賃金は低い。と言わざるをえないでしょう。

保育士になるためには


以上の現状を踏まえて、保育士の数を増やしていかなければいけません。しかし、保育士が足りないと聞いて「じゃあ、私保育士になります!採用試験を受けさせてください!」といって、直ぐに保育士になれるわけではありません。保育士になるためには国家資格が必要です。資格を取得するためには、二通りの方法があります。厚生労働省の指定の保育士養成校に行くか、都道府県の行っている保育士試験を受けて、取得するかです。保育士の資格を取得さえすれば、結婚している主婦でも、社会人になっていても、保育士にはなれます。では、その二つの方法について説明しましょう。

国指定の学校で所定単位を取得

時間はかかりますが、確実に保育士の資格を取得でき、実習の授業も受けられる点でとても良い方法です。
ですが、数十万円~百万円前後の授業料が必要になります。

厚生労働省が指定している、保育士になるための養成学校には、大学、短大、専門学校などがあります。入学資格は、高校卒業以上で、そこで、短大や専門学校なら最低2年間、大学は4年間勉強します。

必要取得単位は、最低68単位で、下記のような履修科目になります。(短大2年間として表示)

・教養科目:外国語、体育、社会学、文学、哲学 等、基礎教養科目 8単位

・専門科目:児童福祉、社会福祉、保育原理、養護原理、教育原理、発達心理学、小児保健、保育内容、乳児保育、音楽、図画工作、保育実習 等 60単位以上

上記は、最低単位で実際には、学校によっても違ってくるようです。

都道府県単位で実施される保育士試験に合格

もう一つの方法は、都道府県単位で実施される保育士試験に合格するこです。
試験には、筆記試験と実務試験とがあります。また、合格した科目については、3年間有効なので3年間以内であれば不合格の科目のみ受験することが出来ます。全8科目で、合格率は、10%~20%と、かなり難関です。

【受験資格】

・大学、短大、高等専門学校を卒業した者

・中学、高校を卒業し、児童福祉施設で2年以上、加えて2880時間の実務経験をした者

・児童福祉施設で7200時間の実務経験をした者

【受験科目】

・筆記:社会福祉、児童福祉、発達心理学及び精神保健、小児保健、小児栄養、保育原理、教育原理及び養護原理、保育実習理論

・実技:音楽、絵画制作、言語 のうち2つを選択

保育士の年収を上げるためには

結婚や、出産後も働くことを希望する女性が増えています。「一億総活躍社会」を掲げたにもかかわらず、待機児童問題はなかなか解決できない。この問題を解決するには、保育の現場が抱える問題を解決するすかありません。

とりわけ保育士不足を解消することは急務といえるでしょう。では、そのためにはどうすればいいのか。次は、その解決策について考えてみましょう。

保育園の運営費を上げる

通常ニーズがあるのに、人手が足りない場合は、賃金は上昇して行くものです。現に今は人手不足で、アルバイトやパートの時給は上がっています。それなのに、保育士の収入はなぜ上がらないのでしょう。

それには、保育園の抱える問題にあります。認可保育園の運営は、国、や地方自治体からの補助金と、保護者からの保育料とでなされています。保育料は、保護者の収入により違ってきますが、基準は、公定価格で決まっているのです。

保育士の賃金を上げるためには、保育料を上げるのが必須なのですが、今の制度では、それも出来ないということになります。つまり、保育園の運営費がもっと上がれば、保育士の賃金も上げられます。

経費削減し、人件費へ回す

保育料も上げられない、現在の状況では、今の運営費を見直し、出来るだけ他の経費を減らし、人件費に回すしかないでしょう。

では、保育園の経費にはどんなものがあるのでしょうか。

・保育施設の確保、設置にかかる費用

・人材募集にかかる費用(広告費)

・園児募集に書かる費用

・おもちゃ、教材、絵本、椅子,机、食器、日用品購入 等 必要物品購入にかかる費用

・遊具の購入

・給食にかかる費用

・体温計、包帯、消毒液、 等 医務作業にかかる費用

・事務費用

・光熱費

などです。

国からの補助金を増やす

単純に考えれば、補助金が増えれば保育士の賃金もあがることになります。

補助金は、園児の年別に単価が決められています。詳しい単価は自治体でも違うので示せませんが、0歳児ですと、一人当たり私立ですと30万円ほど、公立ですと50万円ほどの補助金が支給されているようです。この他にも保育園の店員数や職員の平均勤続年数によっても単価は変わります。

国からの補助金だけでも、年間3,000億円ほど投じられているようです。

当然補助金は税金から出されていますよね。現在でも、一番高い単価とはいえ、0歳児一人当たりにに30万円~50万円も出されているとなると、そう簡単に増やす、ということは難しいのです。国民の負担が増える、ということですから。

まとめ

これまで見て来て、どうして保育士の年収が上がらないのか、分かってきましたね。認可保育園と公立の保育園における保育士の賃金は、保育園の運営費から支払われており、その運営費は、補助金と保育料から成り立っている。という現状が大きいということが言えるのです。

認可外保育園は、完全な民間運営なので、補助金は受けられません。ですから、保育料も高くなります。でも、デメリットだけではないのです。その分規制がかからないので、自由な発想の保育が出来ます。経営者の経営手腕次第で補助金なしでも運営出来るのです。

現在でも、柔軟な発想で運営費を生み出し、ユニークな発想の保育で人気を集めている保育園もあります。働きたいお母さんは、少し保育料が高くても自分の子に合った保育を得れる、認可外の保育園も視野に入れてみて下さい。

認可保育園の規制を緩和し、保育料を保育園側で決められる、等が出来れば、保育士の賃金も上げられるのではないでしょうか。せっかく取得した保育士に「長く働きたい」そう思ってもらえる。そんな職場になるような保育士の早急な待遇改善が必要です。

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