紅茶の本場は、なんといってもイギリスでしょう。イギリスは生活スタイルの中に紅茶を嗜む文化が根付いています。一日の中で何回も飲み嗜むことが当たり前の習慣のようです。
では、イギリスで紅茶の茶葉を生産して育てたり、その土地ならではの独自の作り方があるのかと言えばそうではないのです。イギリスでは紅茶の茶葉を、ほぼ他の国から輸入したものを使って加工しているのです。特にインドの紅茶が良く知られています。
茶葉の栽培がインドの気候に合っていたのでしょう。栽培に成功してイギリスは発展して、紅茶に対する文化も深いものとなっていったのです。
紅茶とゆかりが深いイギリスでよく飲まれる人気の紅茶は一体どんな紅茶でしょう?至福の紅茶時間に、立ちあがる湯気を見ながらふと思う秋の夜長です。イギリスの生活スタイルとともに、人気の紅茶を紹介していきましょう。
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目次
紅茶とは
私達が普段飲んでいるお茶は、たくさんあります。緑茶、麦茶、ウーロン茶、紅茶、ハーブティーなどです。同じ仲間は、緑茶、ウーロン茶、紅茶で、”カメリア・シネンシス”というツバキ科の常緑樹からできています。
茶葉の3つの違いは何でしょうか?これは、製造法の違いです。茶葉の酸化酵素・発酵をさせて作るのが紅茶で、茶葉を少しだけ発酵させて作るのがウーロン茶、発酵させずに作るのが緑茶なのです。味が苦味のあり、濃い色で、香りの強い紅茶が発酵させてできているというのも頷けます。
紅茶の歴史
紅茶の葉は、緑茶やウーロン茶と同じ常緑樹で、中国の雲南省付近、チベットやミャンマーあたりの山岳地帯に発生して育っていたとされています。その中国で、お茶は中国では有史以前から病気に効く薬草として使用されていたと言います。
薬として貴族などの人々に飲まれていたものが、6世紀以降から飲み物として徐々に一般に広まっていきます。ヨーロッパへお茶が持ち込まれたのはかなり後で、17世紀頃とされています。
当時、お茶は”万病に効果がある東洋の薬”として口コミで広まり売っていましたが、ポルトガルがら嫁いできた当時のイギリスの王女キャサリン妃が、中国の茶葉と、当時では珍しい砂糖を大量に持ち込み、宮廷にお茶で優雅に過ごす時間を習慣化させました。
この宮廷ならではの贅沢で優雅な習慣は、イギリスの宮廷社会に広がっていきました。17世紀後半頃から19世紀初めまで、イギリスの東インド会社はお茶の輸入を独占して、その膨大な利益が大英帝国繁栄の基礎を築いたと聞きます。(後に独占廃止となります。)
17世紀中頃、お茶が売り物として初めてイギリスに広まったのは、イギリスの宮廷貴族や各種文化人達の社交場であったコーヒーハウスからとされています。徐々に一般化して中流階級にもなじんで飲まれるようになり、食料品店で紅茶が売られ、各家庭に浸透していきました。
その後、イギリスは産業革命の成功により、食生活に大きな変化をもたらし紅茶はなじみのものとなっていきます。19世紀初め、イギリスの植民地のインド・スリランカでお茶の栽培に大成功したことで一気に海外貿易も拡大して、19世紀末には紅茶が世界に広まり言わずと知れたものになりました。
日本人には、日本茶は食事に欠かせないもので”お茶”と言えば緑茶や麦茶と自然と答えるように、イギリス人はお茶と言えば”紅茶”と答えます。国それぞれのなじみのお茶と思いますが、なんと紅茶に関しては、世界のお茶葉の7割方を占めているのです。
産地こそイギリスとは違いますが、トワイニング、リプトン、ウエッジウッド、などよく聞く紅茶の会社は、全てイギリスの会社というのも頷けます。
紅茶の国と言えばやはりイギリスであり、紅茶にゆかりが深く歴史があるイギリス人の飲む紅茶は、衣服と同じように、生活スタイルに欠かせないもので心地よく馴染んでいるのでしょう。
紅茶の成分
美味しくて世界で人気の紅茶ですが、では、どのような成分でお茶はできているのでしょうか?古来から万病に良いとされているお茶・紅茶の成分には、何が含まれているのかとっても気になりますよね。
①紅茶ポリフェノール
主な成分として、渋み成分の”カテキン”と、紅茶の赤茶色をかもし出す”テアフラビン”などから出来ています。
“カテキン”
カテキンは渋み・苦味の主な成分で、タンニンなど6種の物質があり紅茶に12%から20%ほど含まれています。様々な物質と結合し、自身を変化させやすい性質を持っています。多様な物質の種類があることで、万病に効きやすい効能が発揮されます。
カテキンが酸化すると、きれいな赤茶色になり見た目にも美しくなります。また、芳醇な香りはリラックス効果もあり、嗅ぐ者に豊かな時間をもたらします。
“テアフラビン”
紅茶は色が鮮やかなものが良いとされています。色もよく付くので、歯について飲んだ後はステイン除去のために歯磨き粉でしっかり磨いた方が良いかもしれません。
成分を体が吸収すると、健康に良いさまざまな効果が現れます。
●コレステロールを減らし、動脈硬化を防ぎ、脳卒中を予防する
●がん細胞を抑制する
●お腹の調子を整え、下痢を止める
●エイズ予防に効果がある
●殺菌作用があるため風邪ウイルスから防ぎ、治療に効く
②カフェイン
カフェインは脳の中枢神経の刺激を促し、飲むと利尿作用が働きます。また、脂肪分解も助けてくれます。コーヒーよりも紅茶の方がカフェイン量は多く、より新陳代謝よく効果的に作用します。
③ビタミン
ビタミンA、ナイアシン、B1、B2、Pなどが含まれています。ビタミンを摂取すると、体の調子を整えてくれるため疲れがとれます。
④アミノ酸
口に食べ物、飲み物を入れた際に旨みを感じる成分がこれです。アルギニン、テアニン、アスパラギン、グルタミン酸などの成分です。テアニンは特にリラックス作用が働くと言われています。
⑤無機成分
全体としては5%程度でそんなに多くありませんが、カリウム、リン酸が主に含まれています。微量元素である銅や亜鉛、マンガン、ニッケル、ヨウ素、フッ素などもさまざまな成分を含みます。
紅茶の作り方
●紅茶を茶葉から作る方法
1,柔らかい新芽の部分のみを摘みます。
2,さっと水洗いして直射日光が当たらない陰干しの場所に置き、乾燥させます。丸一日干しっぱなしで香ってきたらOKです。
3,硬い台の上で力の限り両手で揉みほぐします。葉っぱを細かくすることで発酵しやすくするためです。
4,ザルに茶葉を置き、さらに蒸しタオルをかぶせたものをビニール袋で包み2~3時間発酵させます。
5,こげ茶色になり香りが出たら、フライパンで約20分炒って乾燥させます。
生の茶葉から作るのは面倒と思う方もいると思いますが、意外と簡単に出来るので茶葉から作ってみても良いですね。紅茶にするポイントは、発酵が十分出来ていることなのでしっかりと時間をかけて発酵してみてください。
●紅茶のおいしい淹れ方(リーフティー)
1,汲みたての水を沸騰させる。
2,ポットとカップはお湯で温めておく。
3,ティースプーン1杯(2~3g)が1人分とする。細かい葉は中盛、大きい葉は大盛につぎます。
4,沸騰してすぐお湯(150~160ml)を勢いよく注ぎ、すぐ蓋をして蒸らします。細かい葉(2~3分)大きい葉(3~4分)。
5,ポットの湯を軽く混ぜる。
6,茶葉をこしながら濃さを均一に整える。
紅茶は温かいうちがおいしさのポイントなので、ティーマットやコースターを使って保温効果をあげましょう。
紅茶の飲み方
紅茶をさあ飲もう!という時に、そう言えば良い飲み方、マナーや作法ってあるのかしら?と気になります。
1人でさっと飲みたい時にはさほど関係ないかもしれませんが、ゆっくりと誰かとお茶時間を楽しむ時にはお互いが気持ち良く飲めるようにしましょう。
●ミルク、砂糖、レモンを入れる時
紅茶が散らないようにそっと入れましょう。ミルク、砂糖を入れる時は盛ったスプーンをそのまま紅茶に浸してそっと溶かします。熱い紅茶が散るとやけどの危険や服にしみが付く心配があります。はねないように入れましょう。
●紅茶の美しい混ぜ方
カップやスプーンの音をガチャガチャとたてたり、粗雑な扱いをすると美しくありません。そっとスプーンを持ちゆっくりと1回か2回混ぜましょう。
●美しい飲み方
左側にある持ち手を、右手で音をたてないように右回りに持ってきて指をかけて飲みましょう。あごを上に逸らさず、カップを斜めに傾けて、飲む時もズルズルと音をたてずに美しく飲みましょう。
イギリスの時間別紅茶習慣
イギリスには紅茶を嗜む習慣と、その時間帯までもが存在します。そもそもお茶時間という決まった習慣がない日本ではとても気になるところです。どのように時間帯があり、イギリス人は紅茶の時間を楽しんでいるのでしょうか?
朝の紅茶の名称とその特徴
●アーリー モーニングティー
起きてすぐ、目覚めの時のお茶のことを言います。
●ブレック ファーストティー
朝食のときに飲む紅茶です。一晩の断食を破る(ブレック・ファスト・ティー)、という意味で使われています。
●モーニング ティー(イレブンシス)
昼前の午前11時頃に飲まれます。甘いケーキやビスケットなどのお菓子と一緒に楽しみます。
昼の紅茶の名称とその特徴
●アフターヌーンティー
午後3時~5時の間に飲みます。日本でもこの午後3時頃はおやつの時間として一般的です。イギリスでは、軽食のようなサンドイッチや甘いケーキ、スコーンなどのお菓子も一緒にとります。2~3段のティースタンドに軽食やお菓子を置いて取って食べるのが特徴です。紅茶とスコーンのセットでクリームティーとも言います。
●ティー ブレイク
仕事など、休憩時間に飲む紅茶のことです。休憩時間でも、紅茶がお茶として習慣的です。
夜の紅茶の名称とその特徴
●ハイティー
午後5~6時の間に、夕食の前に紅茶と軽食で嗜みます。軽食は、アフターヌーンティーよりも少し豪華でボリュームもたっぷりです。
●アフターディナー ティー
夕食の後に飲む紅茶です。男性と女性に分かれたり、夫婦や家族でそれぞれの会話をリラックスしながら楽しんで過ごします。
●ナイト ティー(ナイトキャップ)
就寝前のお茶を言います。眠る前に興奮しないように、ここではハーブティーを飲むことが多いです。
イギリスで人気の紅茶4選
イギリスで人気の茶葉は、アッサムやセイロン、アールグレイが挙げられます。アッサムやセイロンは、イギリス人が茶葉栽培として選んだインドのアッサム地方で栽培されたことから始まり、現在も好んで飲まれています。
アールグレイは、香りが芳醇な紅茶です。もとは中国から輸入された茶葉ですが、豊かな香り付けがされており、それを気に入った貴族のグレイ伯爵がわざわざ作らせたことからでき、紅茶の名前の由来となっています。
ハロッズ
言わずと知れたイギリスの高級百貨店であり、紅茶の中でも高級ブランドです。茶葉の品質にこだわって作った紅茶がかもし出す味わいは、独自のもの高品質です。ハロッズの字のつづり、流れる文体がお洒落さも現しています。
古くからあるブランドだけに、ファンが多いので味も定評があるのでしょう。来客のお茶や手土産に喜ばれます。ハロッズブレンド14は、アッサム、ダージリン、ケニア、セイロンの4つの茶葉をブレンドしており、それぞれがマイルドに調和されて上品な味わいです。
ハロッズブレンド18は、ダージリン、アッサム、セイロンの3つの茶葉がブレンドされ、味に深みがありしっかりしたコクとバランスを味わうことができます。
フォートナム&メイソン
ロンドンの300年以上も昔からの百貨店の名前です。紅茶の名前としてはあまり知られていないかもしれませんが、日本にお店も出しています。
●ブレックファスト…香りが芳醇なアッサムティーから出来ています。コクがあり、牛乳とよく合います。
●fTGFOP…ファイネスト、ティップ、ゴールデン、ティップ、オレンジ、ペコという意味で高品質の茶葉を言います。ダージリン特有のフルーティーな濃い香りで、香りにこだわる人には好まれます。
●BOP…ブロークン、オレンジ、ペコという芯の芽を使用した茶葉なので芳醇な香りが特徴です。
トワイニング
日本ではこれが一番手に入りやすく安価でメジャーかもしれません。お店に置いているのもトワイニングの紅茶をよく見かけます。ですが、イギリスでは300年以上も前からある英国王室お気に入りのかなり格式が高いブランドのようです。
アールグレイ、ダージリン、最近ではレディグレイが有名です。
●アールグレイ…トワイニングは他社とは異なり、鮮やかな紅茶の色と爽やかなベルガモットの香りが特徴の茶葉です。
●ダージリン…芳醇な香りと独特な苦味が特徴の茶葉です。
●レディグレイ…ベースがアールグレイの、比較的新しいオリジナルのブレンドです。(2001年発売)オレンジやレモンのピール、矢車菊のお花を加えて香るだけで楽しい気分になる華やかさが特徴の茶葉です。
ウエッジウッド
カップやお皿、ソーサーなどの食器類やタオルなどのホームツールの物のイメージが強いウエッジウッドですが、紅茶も出しています。その紅茶とともに同ブランドのカップと良く合う紅茶を入れ、視覚的にも美しい紅茶時間を過ごせるのも特徴です。
●ピュアダージリン
濃い青缶が、味の濃さを思い浮かべます。インドで選別された茶葉を使い、味わいも奥ゆかしさがあります。高貴な香りから、紅茶版のシャンパンのようだと言われています。
●アールグレイ
薄い水色缶が、爽やかな味を想像します。セイロン茶と中国茶の混合でコクがあるのでアイスティーにもよく合います。優雅なベルガモットの香りで気分も華やかになります。
●イングリッシュ・ブレックファスト
その名の通り、朝に飲むのに適しています。ケニア、アッサム、セイロンの3つの茶葉で出来ており、さっぱりとした口当たりで心地よい香りに、朝から気分爽快になるでしょう。
まとめ
いかがでしたでしょうか?イギリス紅茶には、歴史と共に歩んできた深いつながりがあるようです。生活のそばにいつもあるお茶は、私達の日常に欠かせないものです。イギリスのように、一日に幾度も紅茶時間を持つことは、きっと人生を豊かにしてくれることでしょう。
一日のリラックスや明日への活力のために、効果的にお茶を飲むことでいつもフレッシュな自分でいられるように過ごしていきたいですね。
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